2006年07月18日「外交敗北」 重村智計著 講談社 1680円
世界のだだっ子「北朝鮮」。とうとう孤立が鮮明になりましたねぇ。
国連大使は国連安保理事会で、安保理が全会一致で採択した北朝鮮決議を「全面的に拒否する!」「わが国を孤立化させるために安保理を利用している」「拉致問題を国際化させている」「ミサイル発射は通常の軍事演習の一環。いかなる国際法にも違反しない」「日米に発射を事前通報するのはばかげている」とほざいた上で、「圧力をかけるなら別の形でより強い物理的行動を取る以外に選択はない」と尻をまくっちゃった。
吹けば飛ぶような国だからこそ、核が欲しい。韓国とは休戦状態にあるだけで、北はいまだ戒厳令下にあんだからね。
けど、この国には金、銀、鉱石、石油といった資源はたくさんあんだよ。技術がないから自分たちでは開発できないわけ。本来なら、核開発より、そっちを優先すりゃいいんだけど、この国の優先順位はあくまでも「首領様の体制維持」だからねぇ。
民主化したらどうなるか? 独裁者の末路は哀れだもんねぇ。良くてマルコスかパーレビ。まっ、たいていはチャウチェスクだろうな。
だから、しぶとく茶番劇を続けるしかないんだよ。着地点はだれにもわかんない。本人にさえわかんないかもよ。
さてと、通勤快読です。
力作ですな。著者は北朝鮮ウォッチャーの第一人者として知られる人。毎日新聞のソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員として、一貫して朝鮮半島を見続けてきた人です。
この人にかかると、ほかの朝鮮問題研究家が霞んじゃうね。
北朝鮮は絶対に核を手離しません。
理由? 核のない北朝鮮ってのは、クリープのないコーヒー(古いねどうも)どころか、卵のないオムレツみたいなものなのよ。核があるから注目されるんであって、核がなければだれも相手にしないもん。
北朝鮮が核開発しようと決意したのはいつか?
1990年、ロシアに捨てられた時よ。ロシアが韓国と国交回復しちゃったから。
北朝鮮というのは、いままで1度も自立したことないの。いっつもどこかの国から援助してもらってるわけ。
しかも、「振り子外交(重村さん作)」。ロシアに冷たくされると中国に近づく。中国に冷たくされるとロシアの気を惹いて援助をもらう。そうやって生きてきた国なの。
いまなら、エネルギーの7割、食糧の3割を中国からもらってるでしょ。それと韓国ね。太陽政策ってんで、国交もないのに勝手に援助してんでしょ(これ、大変だよ。政権が変わったら逮捕されると思うな)。
振り子外交だから、米朝交渉がうまくいかないと日朝交渉に切り換えるわけ。それがダメになると、南北会談。つねに援助してくれる相手を探してるのね。
金が欲しい、食糧が欲しい。だから、偽ドルも作ったし、偽煙草、覚醒剤、麻薬も国を挙げて作った。
これにアメリカが激怒。
しかし、アメリカがいちばん怒ってるのは、もち、核開発疑惑。
去年、6カ国協議があったけど、アメリカはこんなものになんの成果も期待してません。国内世論向けポーズとして参加してるだけ。
アメリカという国は、北朝鮮問題は中国にすべて解決を負わせるつもりなの。
北朝鮮は50万トンの重油、原子力発電所の援助を捨ててまでも「核査察」を拒否してる。
これ、疑惑としては真っ黒の証明じゃん。だから、北朝鮮は核を放棄しないと、アメリカは判断したわけだ。じゃ、アメリカはどう出るか?
きっと先制攻撃すんだろうね。
9.11以来、「愛国法」ができてます。核疑惑、テロ疑惑国家に対して先制攻撃できる法律があんの。だから、偽ドル工場、偽煙草工場を爆撃すると同時に、核開発工場も攻撃しちゃう。マカオの金正日の金融口座凍結なんて序の口だよ。
アメリカにとって、北朝鮮問題=核問題。だって、北朝鮮のような貧乏国に核が渡ったら、テロ国家やテロ集団、中東などに売るに決まってるもの。つまり、核の分散だよ。
こうなると、9.11みたいなテロがあちこちで起こらないともかぎらない。いや、起こるだろうね。そこがアメリカの国益、自由主義国家全体の利益を損なうマターなんだ。
ところが、小泉さんは日朝交渉(第1回目)でこの点についてここまでの認識がなかった。だから、アメリカは「核開発してるような国と国交を正常化し、経済援助をしようとはどういうことか!」と怒ったわけ。
「日朝首脳会談への小泉首相の努力を歓迎する」というコメントを出すだけだったのもそのため。「努力を歓迎する」という表現は支持しない時に使われる外交的常套句だもん。
じゃこの時、小泉さんの頭の中にあったのは拉致問題?
いえいえ、国内の支持率低下をどうするかという心配だけだったんだ。田中真紀子さんを斬って、70%台から40%台に支持率は急落。なんとしても、人気を回復しなくちゃいけなかったの。参院選にまけちゃうと、持論の郵政民営化が水泡に帰しちゃうもの。
彼にとって、大切なことは郵政民営化、道路公団民営化であって、拉致問題の解決なんて二の次、三の次だったんだろうね。
懸命だったのは安倍晋三さんだけだったらしいよ。
この人は拉致問題がこんなに注目される前から、自民党の政治家の中で唯一、被害者家族のために真摯に動いてくれた人。それと、中山内閣参与。
ところが、この日朝交渉会談で出てきたのは「5人生存、8人死亡」という発表でしょ? それでも小泉さんは「2003年1月1日から国交正常化」「年間15億ドルの経済援助」を約束してたんだよね(重村さんの推理)。
風向きが変わったのは日本に戻ってから。国民が騒いだでしょ。で、小泉さんは「裏約束」を果たせなくなっちゃう。日本人はバカじゃないな、やっぱり。
小泉さんにだれがそんな約束をさせたの?
そう、外務省の田中均アジア大洋州局長。「5人を平壌に返せ。でないと、ミスターXとのラインがなくなる」と1人で騒いで、「できないなら、できる人にやってもらうからいいわ」と中山参与に窘められた人物として有名ですね。
日本にとって、国益とは国家の利益ではありません。国民の利益のことです。
けど、この人にはそんな意識がなかったんだ。前任者にしても「たかが10人のために国交交渉が進まないなんておかしい」と言ってたんだから、外務省というのは国民には甚だ冷たい役所ですなぁ。
拉致問題解決にこれだけ時間がかかってるのは、外務省の外交力の欠如もあるけど、最大のガンはやっぱ政治家。
金丸信という人がいました。東京地検が自宅や事務所に乗り込んだら、金塊がたくさん出てきたって政治家ですね。この人は北朝鮮とホントに仲が良かったですね。国会の審議もしてないのに、ポンと80億ドル援助するって約束してきちゃうんだもの。しかも、拉致問題の解決なんてひと言も言わないの。人の金(税金)だから気前がいいんだ。
「あなたの出自がわが朝鮮族であることに誇りを感じます」なんて、金日成におだてられて感激しちゃう。
こういう無知で外交音痴のくせに、妙に国対政治ばかりが得意な政治屋のおかげで、北朝鮮問題は利権の巣窟に変わっていったんだね。
野中広務という政治家がいました。この人は金丸訪朝団、村山訪朝団、森訪朝団と、政治家の中でもいちばん熱心に北朝鮮詣出をしてた人ですね。
驚くなかれ、91年にはゼネコン各社を引き連れて北朝鮮ツアーなんてしてるのね。この本ではじめて知りましたよ。
国交正常化の後にはODAが待ってます。予算は1兆円。こりゃ、ゼネコンは喉から手が出るほど欲しいわな。国内じゃ公共事業は縮小傾向にあんだからさ、この利権は大きいよ。
警察では北朝鮮でゼネコン相手に演説したメモを保管してるらしいよ。
なんのために?
拉致問題の解決を支持率に結びつけたり、利権に結びつけたり、政治家というのはめざといねぇ。
けど、父親(安倍晋太郎さん)の秘書時代から拉致問題に取り組んでいた安倍晋三さんのような政治家もいる。これがせめてもの救いかな。
拉致問題を見てると、「へぇ、この政治家が北朝鮮の応援してたのか?」「被害者家族にはつれないのに、この人、拉致実行犯には嘆願書まで書いてるんだ」と、与野党の有名政治家の裏の顔が透けて見えます。
本書にすべて書いてあるよ。ぜひ、ご参考に。
やっぱ、次期総理総裁は安倍晋三さんで決まりかな。福田さんは日朝交渉について梨の礫でアメリカの信頼は0らしいしね。
どうせ、北朝鮮の裏には中国が付いてるんでしょう。中国が喜ぶような首相をわざわざ選ぶことはないよ(そもそも、あの人、立候補しないでしょ)。
今後、日本は中韓朝の三国を相手にしぶとい外交を展開していかなくちゃいけないんだ。日中安保条約なんてないんだからさ。アメリカとの同盟をより強化できる政治家でないとダメ。
首相交代後に、小泉外交を展開するって方法もありだと思うよ。政府特使とかさ、昔はたくさんあったんだから(浜口雄幸内閣−−海軍軍縮条約時の若槻礼次郎とかね)。そうすりゃ、実質的に大統領制を先取りしちゃうことになる。いいんじゃない?
日本人必読の書。400円高。
国連大使は国連安保理事会で、安保理が全会一致で採択した北朝鮮決議を「全面的に拒否する!」「わが国を孤立化させるために安保理を利用している」「拉致問題を国際化させている」「ミサイル発射は通常の軍事演習の一環。いかなる国際法にも違反しない」「日米に発射を事前通報するのはばかげている」とほざいた上で、「圧力をかけるなら別の形でより強い物理的行動を取る以外に選択はない」と尻をまくっちゃった。
吹けば飛ぶような国だからこそ、核が欲しい。韓国とは休戦状態にあるだけで、北はいまだ戒厳令下にあんだからね。
けど、この国には金、銀、鉱石、石油といった資源はたくさんあんだよ。技術がないから自分たちでは開発できないわけ。本来なら、核開発より、そっちを優先すりゃいいんだけど、この国の優先順位はあくまでも「首領様の体制維持」だからねぇ。
民主化したらどうなるか? 独裁者の末路は哀れだもんねぇ。良くてマルコスかパーレビ。まっ、たいていはチャウチェスクだろうな。
だから、しぶとく茶番劇を続けるしかないんだよ。着地点はだれにもわかんない。本人にさえわかんないかもよ。
さてと、通勤快読です。
力作ですな。著者は北朝鮮ウォッチャーの第一人者として知られる人。毎日新聞のソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員として、一貫して朝鮮半島を見続けてきた人です。
この人にかかると、ほかの朝鮮問題研究家が霞んじゃうね。
北朝鮮は絶対に核を手離しません。
理由? 核のない北朝鮮ってのは、クリープのないコーヒー(古いねどうも)どころか、卵のないオムレツみたいなものなのよ。核があるから注目されるんであって、核がなければだれも相手にしないもん。
北朝鮮が核開発しようと決意したのはいつか?
1990年、ロシアに捨てられた時よ。ロシアが韓国と国交回復しちゃったから。
北朝鮮というのは、いままで1度も自立したことないの。いっつもどこかの国から援助してもらってるわけ。
しかも、「振り子外交(重村さん作)」。ロシアに冷たくされると中国に近づく。中国に冷たくされるとロシアの気を惹いて援助をもらう。そうやって生きてきた国なの。
いまなら、エネルギーの7割、食糧の3割を中国からもらってるでしょ。それと韓国ね。太陽政策ってんで、国交もないのに勝手に援助してんでしょ(これ、大変だよ。政権が変わったら逮捕されると思うな)。
振り子外交だから、米朝交渉がうまくいかないと日朝交渉に切り換えるわけ。それがダメになると、南北会談。つねに援助してくれる相手を探してるのね。
金が欲しい、食糧が欲しい。だから、偽ドルも作ったし、偽煙草、覚醒剤、麻薬も国を挙げて作った。
これにアメリカが激怒。
しかし、アメリカがいちばん怒ってるのは、もち、核開発疑惑。
去年、6カ国協議があったけど、アメリカはこんなものになんの成果も期待してません。国内世論向けポーズとして参加してるだけ。
アメリカという国は、北朝鮮問題は中国にすべて解決を負わせるつもりなの。
北朝鮮は50万トンの重油、原子力発電所の援助を捨ててまでも「核査察」を拒否してる。
これ、疑惑としては真っ黒の証明じゃん。だから、北朝鮮は核を放棄しないと、アメリカは判断したわけだ。じゃ、アメリカはどう出るか?
きっと先制攻撃すんだろうね。
9.11以来、「愛国法」ができてます。核疑惑、テロ疑惑国家に対して先制攻撃できる法律があんの。だから、偽ドル工場、偽煙草工場を爆撃すると同時に、核開発工場も攻撃しちゃう。マカオの金正日の金融口座凍結なんて序の口だよ。
アメリカにとって、北朝鮮問題=核問題。だって、北朝鮮のような貧乏国に核が渡ったら、テロ国家やテロ集団、中東などに売るに決まってるもの。つまり、核の分散だよ。
こうなると、9.11みたいなテロがあちこちで起こらないともかぎらない。いや、起こるだろうね。そこがアメリカの国益、自由主義国家全体の利益を損なうマターなんだ。
ところが、小泉さんは日朝交渉(第1回目)でこの点についてここまでの認識がなかった。だから、アメリカは「核開発してるような国と国交を正常化し、経済援助をしようとはどういうことか!」と怒ったわけ。
「日朝首脳会談への小泉首相の努力を歓迎する」というコメントを出すだけだったのもそのため。「努力を歓迎する」という表現は支持しない時に使われる外交的常套句だもん。
じゃこの時、小泉さんの頭の中にあったのは拉致問題?
いえいえ、国内の支持率低下をどうするかという心配だけだったんだ。田中真紀子さんを斬って、70%台から40%台に支持率は急落。なんとしても、人気を回復しなくちゃいけなかったの。参院選にまけちゃうと、持論の郵政民営化が水泡に帰しちゃうもの。
彼にとって、大切なことは郵政民営化、道路公団民営化であって、拉致問題の解決なんて二の次、三の次だったんだろうね。
懸命だったのは安倍晋三さんだけだったらしいよ。
この人は拉致問題がこんなに注目される前から、自民党の政治家の中で唯一、被害者家族のために真摯に動いてくれた人。それと、中山内閣参与。
ところが、この日朝交渉会談で出てきたのは「5人生存、8人死亡」という発表でしょ? それでも小泉さんは「2003年1月1日から国交正常化」「年間15億ドルの経済援助」を約束してたんだよね(重村さんの推理)。
風向きが変わったのは日本に戻ってから。国民が騒いだでしょ。で、小泉さんは「裏約束」を果たせなくなっちゃう。日本人はバカじゃないな、やっぱり。
小泉さんにだれがそんな約束をさせたの?
そう、外務省の田中均アジア大洋州局長。「5人を平壌に返せ。でないと、ミスターXとのラインがなくなる」と1人で騒いで、「できないなら、できる人にやってもらうからいいわ」と中山参与に窘められた人物として有名ですね。
日本にとって、国益とは国家の利益ではありません。国民の利益のことです。
けど、この人にはそんな意識がなかったんだ。前任者にしても「たかが10人のために国交交渉が進まないなんておかしい」と言ってたんだから、外務省というのは国民には甚だ冷たい役所ですなぁ。
拉致問題解決にこれだけ時間がかかってるのは、外務省の外交力の欠如もあるけど、最大のガンはやっぱ政治家。
金丸信という人がいました。東京地検が自宅や事務所に乗り込んだら、金塊がたくさん出てきたって政治家ですね。この人は北朝鮮とホントに仲が良かったですね。国会の審議もしてないのに、ポンと80億ドル援助するって約束してきちゃうんだもの。しかも、拉致問題の解決なんてひと言も言わないの。人の金(税金)だから気前がいいんだ。
「あなたの出自がわが朝鮮族であることに誇りを感じます」なんて、金日成におだてられて感激しちゃう。
こういう無知で外交音痴のくせに、妙に国対政治ばかりが得意な政治屋のおかげで、北朝鮮問題は利権の巣窟に変わっていったんだね。
野中広務という政治家がいました。この人は金丸訪朝団、村山訪朝団、森訪朝団と、政治家の中でもいちばん熱心に北朝鮮詣出をしてた人ですね。
驚くなかれ、91年にはゼネコン各社を引き連れて北朝鮮ツアーなんてしてるのね。この本ではじめて知りましたよ。
国交正常化の後にはODAが待ってます。予算は1兆円。こりゃ、ゼネコンは喉から手が出るほど欲しいわな。国内じゃ公共事業は縮小傾向にあんだからさ、この利権は大きいよ。
警察では北朝鮮でゼネコン相手に演説したメモを保管してるらしいよ。
なんのために?
拉致問題の解決を支持率に結びつけたり、利権に結びつけたり、政治家というのはめざといねぇ。
けど、父親(安倍晋太郎さん)の秘書時代から拉致問題に取り組んでいた安倍晋三さんのような政治家もいる。これがせめてもの救いかな。
拉致問題を見てると、「へぇ、この政治家が北朝鮮の応援してたのか?」「被害者家族にはつれないのに、この人、拉致実行犯には嘆願書まで書いてるんだ」と、与野党の有名政治家の裏の顔が透けて見えます。
本書にすべて書いてあるよ。ぜひ、ご参考に。
やっぱ、次期総理総裁は安倍晋三さんで決まりかな。福田さんは日朝交渉について梨の礫でアメリカの信頼は0らしいしね。
どうせ、北朝鮮の裏には中国が付いてるんでしょう。中国が喜ぶような首相をわざわざ選ぶことはないよ(そもそも、あの人、立候補しないでしょ)。
今後、日本は中韓朝の三国を相手にしぶとい外交を展開していかなくちゃいけないんだ。日中安保条約なんてないんだからさ。アメリカとの同盟をより強化できる政治家でないとダメ。
首相交代後に、小泉外交を展開するって方法もありだと思うよ。政府特使とかさ、昔はたくさんあったんだから(浜口雄幸内閣−−海軍軍縮条約時の若槻礼次郎とかね)。そうすりゃ、実質的に大統領制を先取りしちゃうことになる。いいんじゃない?
日本人必読の書。400円高。