2003年10月27日「大魔神が教えるマーケティングの極意」「ビル・ゲイツの面接試験」「青春ドラマ夢伝説」

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」


1 「大魔神が教えるマーケティングの極意」
 ジャック・トラウト著 1200円 阪急コミュニケーションズ

 大魔神というから、マリナーズの佐々木かと思いましたよ。大魔神というのは「アラジンと魔法のランプ」に出てくるあれ。
 ランプをこすると、「ご主人様、ご主人様」といって出てくるあれです。

 で、この大魔神はご主人様がマーケティング上で困ったことが起こると、パソコンから登場してくれるというわけです。
 ただし、十回だけ。
 著者のジャック・トラウトというのは広告会社、マーケティング会社の経営者です。いままで本欄でも紹介したことがあるかもしれません(あまり覚えてないけど)。本格的なマーケティングの本ではなく、寓話の形で解説したというスタイルになってます。

 ところで、「マーケティング」とは何でしょうか?
 アメリカ・マーケティング協会の定義によれば、「マーケティングとは、アイデアや財、サービスについて、コンセプトづくり、価格設定、販売促進、流通を計画し、実行することによって、個人や企業の目的を満足させる交換を生み出す過程である」とのこと。
 なるほどねえ、ちっともわからない。
 わたし自身は、「昨日まで売れなかったものを、今日から売れるようにするためのすべての方策」とマーケティングを定義しています。
 
 事業拡大を図る会社は少なくありませんが、「成長」という神話作りのためにいままでせっかく独自性を生み出していたにもかかわらず、フォーカスを失うケースが少なくありません。
 コアブランドを傷つけてはいけないんです。
 手がけるべきではない事業に手を出してはいけませんな。
 たとえば、マルボロがメンソール系のタバコを販売したり、キャディラックが小型車を出したり、ポルシェがSUV車を出す。サブ・ブランドをつくって、新しい事業を顧客に納得してもらおうとする。
 しかし、顧客はそっぽをろ向いているわけです。

 BMWは7シリーズ・5シリーズ・3シリーズというラインナップで成功しました。
 しかし、ベンツが好調だったSシリーズ、Eシリーズのほかに、Cシリーズ、Mシリーズと広げたのは大失敗ですね。
 ブランドとは顧客との約束なのです。ブランドの持ち味やコンセプトが損なわれてはいけないのです。
 社内の人間が「改良した」というものは、実は顧客の頭を混乱させるタネに過ぎなかったというケースが少なくありません。

 マーケティングで勝つ基本は一番乗りできるカテゴリーを作ることにあります。
 マーケットに一番乗りすることが、よりよい製品を出すことよりもポイントなのです。どんな分野でもトップブランドは、顧客に最初に認められたブランドです。
 たとえば、レンタカーのハーツ、コンピュータのIBM、ソフトドリンクのコカコーラ、コーヒーのスターバックスなどなど、みんなそうです。
 一番乗りしたブランドが業界をリードします。
 すなわち、スコッチテープ、バンドエイド、ゴアテックス、クリネックスなどは日本でも有名ですが、これはすべて固有名詞ではなく、ブランドネームなのです。

 では、一番手でない場合はどうするか?

 二番手ならば、製品を改良するか、同じカテゴリーでも別のセグメントや別の顧客グループを狙います。
 すなわち、ターゲティングを変えることです。
 既存のカテゴリーに製品を投入するつもりならば、異なるセグメントを標的にし、そのサブ・カテゴリーを目指すべきなのです。後追いやラインの拡大は避けるのです。
 コークが大人向けであれば、ペプシはヤング向けにマーケティングを展開しました。強力な代替戦略を推進すれば、二番手でも大成功を収めることができます。

 では、三番手、四番手は?

 手を出さないことです。ジャック・ウエルチなど、一位か二位になれない事業はすべて撤退する、というように徹底していたではありませんか。
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2 「ビル・ゲイツの面接試験」
 バウンドストーン著 青土社 2200円

 「これができれば天下の逸材」と帯コピーにあります。ホントかなぁ。
 一言で言えば、天下の一流会社の入社試験、面接試験に出題される問題集を編集して、正解付でまとめた本・・・です。
 はっきり言って、最初の三章までは不要です。いきなり、「マイクロソフトの面接問題」という箇所から入った方が良かったのではないでしょうか。後半は解答欄になってますから、電車内での暇つぶしにはもってこいだと思います。

 たとえば、1957年にトランジスタを開発したショックレーの会社での面接。
 「テニストーナメントがあって、127人の選手が参加する。126人で63試合を組み合わせ、残った1人は不戦勝です。2回戦では64人が32試合をします。優勝が決まるまで、全部で何試合することになるでしょうか?」
 二十代前半のジム・ギボンズという若者が即答。
 「126試合です」
 「ファイナルアンサー?」と聞いたかどうかはしりませんが、まるで、映画「グッド・ウィル・ハンティング」のマット・デーモンですな、こりゃ。
 「だれかに聞いたの?」
 「選手が1人敗退するのに一試合必要で、勝者が残るには126人が敗退しなければなりません。だから、126試合することになります」
 「正解!」
 みのもんたは答えます。

 マイクロソフトの面接問題は秘密だそうです。
 でも、あとで聞けばすぐわかるよね。
 「職場の同僚が不正なことをしているのを見たら、それを上司に言いますか?」
 「一度に何件くらいの案件を処理できますか?」
 「仕事を手早く片づけるのと、完全に仕上げるのと、どちらが大切ですか?」
 「自分のばあさんにエクセルをどう説明しますか?」
 「どうしてマンホールの蓋は丸いんだろう?」
 この最後の問題など、わたしが学生時代にもありましたよ。
 まっ、こんな問題がいろいろ書かれてます。結論としては、論理的な発想と超論理的な発想(直観)の両方ができるかどうか。そこを見てるんでしょうな。
 正解かどうかよりも、どんな考え方で解こうとするか、どんな説明をするか、表現の仕方などに注目していると思います。
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3 「青春ドラマ夢伝説」
 岡田晋吉著 日テレ 1500円

 いまいちばん注目されているテレビ局から出版された本です。
 「あるプロデューサーのテレビ青春日誌」とあるとおり、これは団塊の世代をピークに15年くらいの間に制作された青春ドラマについて語った現場の声です。

 青春ドラマというと、フジの月9をはじめとしたトレンディドラマとはかなり様相が違ってます。
 主人公は基本的に先生であり、毎回、事件を起こす学生たちが順番にサブの主人公を務めていくといった形ですね。
 たとえば、「青春とはなんだ」。これは石原都知事が原作を書いたんです。
 大ヒットしました。布施明が唄う主題歌もヒットしました。

 その原因は、「少数派に勝利を与える」という視聴者を感動させる法則にずばり当てはまったからでしょう。
 民主主義の世の中はすべて「数」が勝負を決めます。多数決には逆らえません。メジャーがいつも勝ち、マイノリティは常に負ける。
 名門高校はいつも勝ち、不良高校はいつも悪者。
 こういう構図を壊す。マイノリティにもスポットライトを浴びせる。そこにドラマがあり、感動が生まれる・・・という視聴者を感動させる法則があるわれです。

 「青春とはなんだ」が大ヒットした後、主役の夏木陽介が降りてしまいます。映画のほうが幅をきかせていた時代ですから、元の東宝映画で撮影をしなければならなくなった。
 そこでタイトルはどうする?
 主役はだれ?
 「青春とはなんだ」という問いかけに対する回答がこれ。
 「これが青春だ」
 安易なタイトルだと非難されるものの、一年間やってきてみて、やはり、これがいい。
 主役はアメリカ帰りの竜雷太さん。
 それから、「でっかい青春」「進め!青春」と続いて、「おれは男だ!」「飛び出せ青春」のあと、いくつかの青春ものが続きます。
 同時に、「傷だらけの天使」「太陽にほえろ!」などのヒット企画もありました。

 けどけど、わたしがいちばん好きだったのは「俺たちの旅」ですね。
 これは高校時代に再放送がありまして、はまりました。もう真っ先に帰ってきて見てたもんね。大学にはじめて行った時は古本屋でこの本を探しまくってたもの。読売新聞社から出版されてたんで、探した探した。
 いま、ビデオでも見られます。わたし、すべて見ました。何回も見ました。続、続々も見ました。
 鎌田敏夫さんの脚本。かーすけ、おめだ、ぐず六、わかめ。この4人がいい味出してましたよ。
 いま、テレビ東京の旅番組にぐず六役の秋野太作さんやその嫁さん役の上村香子さんがよく出ます。あまりのふけ方にがっくりきますが、それはすなわち、わたし自身もそれだけ年を取ったという証拠ですな。
 
 その他、青春ドラマ以外にも「怪獣ブースカ」「さぼてんとマシュマロ」といったヒット番組についてもエピソードがたっぷり。
 もう団塊の世代にはたまらない一冊です。
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