2013年01月07日アベノミクスってどうなるの?

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 今日から本格始動。仕事始めという方は多いでしょうね。まだ休み? 羨ましい。。。

「金融超緩和路線の安倍さんが再登板」という噂先行のみで、円安と株高が続き、2年ぶりの円安だ、いや3年ぶりだ、と大はしゃぎのようです。
 一方、アメリカは「財政の崖」を前に、いつものように大統領、共和党、民主党の三文芝居でなんとか回避。とはいいつつ、2か月経ったらまた大騒ぎになるんでしょうな。

 中国は米国債を叩き売りたいんでしょうが、「売る」という噂がたったら自分で自分の首を絞めてしまいます。米中は経済では貿易にしても国債購入にしてもいまや一蓮托生。

 政治の世界だって一蓮托生かもしれません。

 尖閣諸島にしてもニクソン政権は中国優先で日本の味方なんぞついにしませんでしたし、オバマにいたるまで、あくまでも「日中2国間の問題」と突き放してきましたからね。

 ま、国の防衛というのは第三者を利用しても、基本的には自分で守るのが当たり前。安倍さんは訪米すれば、TPPへの参加と中国が購入している米国債を肩代わりしろ、と注文されるのではないでしょうか。米国債を買えばますます円安になりますから、安倍さんとしては万々歳かもね。

 その原資はというと、この調子ですと、日銀法改正で新発国債の日銀引受なんてことになるかもしれません。で、「インフレ到来」ということですかね。

 物価だけむりやり上げても、給料がそれ以上に上がらなければ話になりません。
 60〜70年代は当時の大蔵大臣が「狂乱物価」と嘆くほどのインフレ(30%!)でしたけど、ロイ・ハロッドの『動態経済学序説』をひもとくまでもなく、給料も同じだけ上昇してましたから「気分」はそれほど悪くはなかったんでしょう。けど、いまは給料は頭打ち。リストラの嵐が吹き、就活の門戸もますます狭くなるばかり。「デフレ」のおかげで、実質的にはあの狂乱物価の頃と同じように生活はできているわけです。

 物価と給料が下落するより、物価と給料がともに上昇するほうを選びたがるのが人間なのかもしれません。経済理論よりも「自分がどう解釈するか」という世界で生きているのが人間ですからね。もちろん物価は下がり、給料がドカンと上がれば万々歳ですわな。

 デフレだろうとインフレだろうと、景気、元気、やる気という国民の「気」を殺ぐことだけは政治家もメディアもしないでもらいたいですな。

 日本人はインフレになればなったで、デフレになればなったで、賢く生きていきます。あの敗戦直後の大混乱期。ハイパーインフレ時代も生き抜いてきた人たちがまだまだご健在ですからね。円安になれば輸入品、とくに資源・エネルギー関連品と食糧の価格はドカンと上昇します。ほぼ全面原発停止のいま、世界的食糧難で各国とも食糧防衛スタンスに切り替わっているいま、円安にしてどうするつもりなのでしょうか?

 インフレになればいずれ金利も上昇することでしょう。経営者ならそんなことは先刻承知です。はたして、借金してでも設備投資しようとする人がどれだけいるのでしょう? 設備投資は「儲かる!」と判断するからするのであって、金利が高かろうが安かろうが、インフレだろうがデフレだろうが、そんなことは二の次三の次の話です。

「金利が上昇するから利子も高くなる」と喜ぶのはお金に働かせている大金持ちしかいません。
 97年以来、私のような庶民は家計が傷つき、預貯金できる余裕なんてとてもとても。1パーセント利上げされたところで少ない預金残高ではありがたみなどな〜にもありません。私だけでなく、これが現役世代の本音ではないでしょうか。

 どうやらアベノミクスはインフレはインフレでも、結果として見れば、典型的な「コストプッシュ・インフレ」で、理想的な「ディマンドプル・インフレ」とはならないかもしれませんね。

 実は、給料が減り始めたのは97年からです。物価は90年代に入ってから下落しっぱなしですね。

 当時、欧米主要国が財政健全化に取り組む中、日本だけが正反対の方向に突進してしまいました。「97年の財政構造改革法のせいで不況になった」「財政再建を進めると景気が後退する」という恐怖に駆られる方は少なくないと思います。97年というと、北拓、山一、三洋証券などが相次いで破綻した年ですもんねえ。それと消費税のアップがありましたね。

 10年で景気対策を10回トータル136兆円も使ってきました。それでいて成長率は年平均1.3%しかなかった。皮肉でいいまずか、奇跡だと思います。幸い、超低金利でしたから国債の返済も低かった。これで助かりましたね。

 ゼロ金利政策が実質的に始まった99年4月からです。銀行の保有国債は52兆円に膨れ、メーカーの海外現地生産が急増して96年には日本国内からの輸出総額を上回りました。
 当たり前ですよね。90年4月の1ドル160円から5年で80円超の円高ですもんね。

 93〜94年、日本の1人当たりGDPはアメリカを4割も上回っていたけど、東京の物価はニューヨークの3割高、パリの2割高。

 94年から3年間で総額16.5兆円の所得税減税。まったく方向音痴の公共事業。

 このお門違いの政策カンフル剤のおかげで96年には国と地方を合わせた債務はGDP比80%超となったわけです。
 「不景気は嫌、我慢はもっと嫌」という国民の声、、、というより土建屋さんの声に対処療法的に対した自民党政治の失敗が主因でしょう。

 追い打ちをかけてアジア通貨危機とロシアのデフォルト。

 90年代前半に行われるべき公的資本注入は99年3月にようやく行われる始末。政治はいつも後手後手。

 伊藤元重東大教授は「インフレもデフレも望ましいものではない。しかし、どちらかを選択しなければならないとしたら、インフレを採る」と日経新聞で述べてましたが、庶民が生活苦にあえぐ中、物価が下がるデフレのほうがインフレよりもましでしょう。金利が上がったところで、私のように残高がスッカラカンでは話になりません。それより価格破壊のほうが生きていけます。

 そういう意味では、森永拓郎さんの意見も違うのでは、と考えています。

 年末に少し書きましたが、アベノミクスは12年前に森政権がやろうとしていることは中身は同じです。当時、森さんは緊急経済対策として、1政府の経済政策との整合性の確保、2現在のデフレ状況を認識し、さらなる金融緩和を実施、3物価安定の目標を明らかにすべき、と日銀に要請しています。

 デジャブ。モリブー。森さんがやるとダメで、安倍さんがやると株高・円安になる。おかしいですが、これが日本人なのかもしれませんな。

 経済はやはり気で動きますよ。というよりも、まだ日本と日本人にはそれだけの底力がある、という証明でしょう。


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