2013年01月09日母をたずねて三千里。。。

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

『母をたずねて三千里』はいまなお人気のテレビアニメですね。何回、再放送されたかわからないほど。


原作はエドモンド・デ・アミーチス著『クオーレ』。しかも、そのなかの一節(「アペニン山脈からアンデス山脈まで」)。

 となれば、こんなに長いアニメになるわけがありません。ここまで膨らませたのは脚本家の力ですね。

 物語はご存じのように、1882年、イタリアのジェノヴァで暮らす少年マルコがアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに出稼ぎに行ったっきり音信不通の母アンナを探しに行く、というものです。
 原作にはありませんが、そもそもアンナが出稼ぎに行かねばならなくなった理由は、夫ピエトロの借金返済のため。
 この夫というのが赤ひげのような人物で、貧困層相手に無料診療所をつくろうと借金してるわけで、そんなことをして、妻を遠い異国の地に出稼ぎにやるのですから、ある意味、「困ったちゃん」ですわな。
 9歳のマルコもこんな甲斐性のない父親を相手にするより、やっぱり健気な母親を慕うのは当たり前かもしれません。もちろん、アニメではそんなにひどい父親としては描かれてはおりません。ボランティア精神旺盛な善意の人というわけです。

 まあ、周囲を振り返ってみても、こういう善意の人ほど貧しいし、家族を路頭に迷わせてるタイプが少なくないようでね。。。トホホ。

 さて、なにが言いたいかといいますと、ほんの130年前にはヨーロッパから遠路はるばる出稼ぎに行くほど、アルゼンチンちゅう国は景気が良かった、つうことです。産業革命は人々を幸福にはしませんでしたからね。当のイギリスがいちばん不況でしたもん。
 言ってみれば、どん詰まりのヨーロッパから見れば、彼の地は「夢の国=アルゼンチン・ドリーム」つうわけです。

 それがいまや、なんと「市場にアルゼンチン不安 債務返済巡る訴訟で混乱 欧州危機対応にも冷水」とメディアに叩かれる始末。
 ご存じのように、2001年には、貿易赤字、財政赤字、巨額の対外債務膨張に、おりからの金利上昇で金融市場が崩壊。経済進駐軍IMFが乗り込んできましたが、01年にデフォルトを宣言しましたよね。

 いま、アルゼンチンが繰り広げているのは、債務返済に関するアメリカのファンドとの法廷闘争です。すなわち、デフォルトしたあと、民間投資家の債権を大幅カット(800億ドル)したんだけど、このとき、減免に応じなかった投資家たちがいたわけで、彼らは国債元利金の全額返済を要求してるっつうわけです。

 2012年11月、「すべての債権者を平等に扱う」という「パリバス条項」を踏まえて、アメリカ連邦地裁がアルゼンチンに13億ドルの支払いを命令したとたんにCDSは急騰。ま、当然です。
いま現在は、連邦高裁が判決の効力を一時止めてますからペンディングにはなってますけどね。もしほかの投資家までが放棄分を取り立てようとなれば、アルゼンチンはもう一度デフォルトしかねない、つうわけです。

 で、気になるのは、「どうしていま?」という素朴な疑問。

 このニュースを聞いたとき、ふ〜ん、またまたユーロに対する嫌がらせかいな。ECBのドラギ総裁が南仏国債の買い入れを「青天井」にすると発表して、ようやく落ち着いたユーロ問題に、もう一度、英米は火をつけたいんかいな。。。と直感。執拗ですな。仁義なき戦い。新しい冷戦。握手しながら蹴飛ばし合ってるっつう構図です。

 わざわざアルゼンチンを使うとこなんざ、さすがでんな。こういう芸当はやはり英米にしかできません。で、ギリシャ問題が再燃するかもしれません。また、そうなってほしいんでしょうな。日本の健全な国債にまで悪影響が出るかもしれませんな。

 ねらい? 「財政の崖」からのバンジージャンプまでの2カ月間に、リスクマネーを米国債に集めたいんでしょう。。。まあ、いつもの癖です。

 最新刊の『世界経済が・・・』にはこんなことを山ほど紹介しました。御用とお急ぎでない方は書店でちょいと眺めてください。
 都市圏だけでなく全国津々浦々で売れている、とのこと。おかげさまで大増刷となりました。来週、本書のみの新聞広告が2日連チャンであるらしいです(私の嫌いな新聞ですけど)。ありがとうございます。

 さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『続・暴力団』(溝口敦著・新潮社)です。詳細はこちらからどうぞ。