2013年02月15日アベノミクスってどうなるの? 第7弾
カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」
2%のインフレ目標とデフレ脱却を訴えるアベノミクス効果で、株価はリーマン・ショック以来最高値更新。2カ月足らずで15円の円安は輸出企業には福音でしょう。
ところで基本的な話ですが、いま、デフレなの?
総務省がピックアップしたモノのうち価格が下落したのは3割。で、残りは現状維持か上昇してます。落ち込みがとくに激しいのは資源価格とサービス価格、そしてハイテク価格。。。技術進歩と競争激化の結果、下落したのであってデフレではありません。
原発停止で原油と天然ガスを大量購入しましたから貿易赤字は当然です。しかし円高分だけ安く買えました。
いまにデフレが懐かしく思えるようになります。
インフレなんかなりっこないのに、2%のインフレターゲット。できるわけがないから、白川さんは任期前に辞めちゃいます。で、あとは「量的緩和」と「インフレ」が大好きな学者さんが総裁になるんでしょう。
量的緩和とインフレ。これ、別物です。
まずは物価を上げる。給料が頭打ちなのに物価だけが上がれば使えるお金は目減りします。何かを買えば、その分、何かが売れなくなります。売れなくなったモノを売ったり、つくってる企業や人は儲かりません。マーケットから追い出されます。
あのマクドナルドが減収減益です。この1〜2年、100円コーヒーや100円マックしか注文しない人が増えたのでしょう。客単価が落ちたのです。高いハンバーガーやセットメニューはやめとこう、節約しようよ、となりました。
「これからは物価を上げるから、それぞれ150円コーヒーと150円バーガーにできますよ」と言われても、そんなことはしないでしょう。なぜなら、コンビニのおにぎりにお客さんをとられてしまうからです。
はたしてマクドナルドは値上げするんでしょうか。。。
購買力平価で考えても、世界中で日本のマクドナルドがいちばんお買い得です。つまりデフレ対応の価格なんです。それを無理矢理インフレ価格にするのがアベノミクスです。
これから、円安になり、材料や資源、電力などのコストが高くなる分、価格に転嫁できるのでしょうか。よりいっそうの経営努力でカバーするつもりでしょうか。やっぱり売上を増やして利益を出して、賃金をアップさせたいでしょうが、かなりきついと思います。
円安トリックで赤字が黒字に転換した輸出中心の企業ならベアも可能でしょうが、はたして、ベアを断行できるでしょうか。せいぜいボーナスなどの一時金でしょう。なぜなら、ベアは退職金や社会保険などに連動するからです。ベアで所得税と住民税をたくさんとりたいでしょうが、賃金をどうするかは、経営者が決めます。首相の出る幕ではありません。
だから安倍首相は「賃金を上げて欲しい」と財界に懇願したのです。
しかし不思議ですね。賃金を上げろという一方で、2%のインフレにしろ、というのですから。インフレとは実質的な賃金下げでしょ。
ここ数年、企業の剰余金(=内部留保)は貯まる一方なのに従業員の給料とか賃金は頭打ちでした。リストラ旋風ですから実質的にはダウンしてきました。円高とデフレのおかげで生活できたようなものです。上場企業の役員報酬だけが右肩上がりで増え続けています。
財界のお偉いさんは増税も関係なし。インフレも関係なし。円安ウェルカムでしょう。ま、財界を敵に回すようなことを政府が言うわけがありません。
「賃金は上げましょう。けど、それは成果を上げた人にです。そうだ、成果主義をまたやりましょう。年俸制にしましょう」という論理のすり替えが行われるかもしれません。
けど、経営者たちは知っています。成果主義などなんの役にも立たないことを。
根本的な疑問ですが、「物価を上げろ、それに比例して賃金も上げろ」と言いますが、いったいどんな理由をつけて、企業は製品やサービスの価格を上げるのでしょうか。社会主義国じゃあるまいし、家電メーカーですら10社以上もある日本で。。。談合せよ、というのでしょうか。
安くても売れない。高くても売れる。
問題は高くても売れる商品とかサービスが少ないことでしょう。可処分所得が少なくなると、いちばんいい商品とかサービスだけが売れます。2位はなんとかしがみつき、3位以下はマーケットから消えます。
だから価格を安くして踏ん張るわけです。2位にシェアを奪われたくないから業界トップだって価格を上げたくはありません。結果、シェア1位のガリバー企業だけが価格を上げられるわけです。
しかし、そんな企業はとっくに上げています。
価格を上げ、賃金を上げ、円安にして。。。インフレになったところで、通貨高となった外国企業にとって、いまほど日本企業の買収がしやすいタイミングはありません。
「株高にして時価総額を上げてるから大丈夫だよ」
本当でしょうか。株高より為替のほうがはるかにスピードか早くインパクトが強いと思います。強制インフレの結果、ハゲタカは日本企業買収のチャンス到来。日本の不動産買い占めのチャンスです。
円安・インフレにすることが自己目的化されているようですが、大切なことは企業体質の強靱化です。ゼネコンが喜ぶ国土強靱化=公共事業よりも、強靱化すべきなのはこっちのほうです。
さて、通貨が減価すれば輸出競争力が高まります。だから貿易収支は赤字が黒字転換したり、大幅黒字になったりします。
けど1973年のイギリスはポンド下落にもかかわらず貿易赤字は拡大しました。おかげでデフォルト寸前になって、IMFの緊急融資を受けました。
ポンドが安くなってもそんなに急に輸出や輸入が増えたり減ったりはしません。ふつうは通貨が安くなれば輸出競争力がつきます。相手国のの通貨建て輸出額は同じでもポンド建て輸出額は増えるはずです。ところがそうはならなかった。貿易赤字が増えてしまった。早い話が、通貨安は輸出になんの貢献もせず、国内物価だけを押し上げて高インフレを叶えた、ということです。
いま、円安で株高となり、大喜びの輸出企業経営者と投資家ですが、3月決算に愕然とするはずです。つまり輸出の激減です。
インフレには振れるでしょうが、それが景気回復につながるとは限りません。かつてのイギリスを見れば、インフレ+スタグネーション=スタグフレーションとやらになってしまうかもしれません。
さて、インフレには賃上げだけでなく、金利上げも付きものです。
もし超低金利が3%にでもなれば、個人金融資産1500兆円の利息は45兆円になります。国家税収より多くなります。年10兆円の消費税収(5%)なら4年半分です。消費税を22.5.%にしてもへっちゃらです。
もち、すべてが消費に回るわけではありません。お金持ちは元金を減らすのは嫌でしょうが、利息のような「あぶく銭」ならいくらでも使うでしょう。毎年入ってくるからです。
でも残念なことに、どんなにインフレになろうと政府は金利を上げませんよ。1%の上昇で大手金融機関3.5兆円、地方銀行2.8兆円の損失だからです。生保は15兆円ものロスで破綻しかねません。だからインフレなのにゼロ金利はまだまだ続きます。
50年代、アメリカでは預金金利に上限が貴蹴られ(レギュレーションQ)がありましたけど、あのときも資金はより高い金利を求めてヨーロッパに移りました。今回も、外国人は日本国債からほかの金融商品にシフトするでしょうし、金利を政策的に上げなくても、長期金利は市場の論理で動きますから、国債の利率は暴騰し、国債の価格は暴落することになるかもしれません。
こうなったら日本経済は火だるまです。
さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『日本人はなぜ貧乏になったか?』(村上尚己著・中経出版)です。詳細はこちらからどうぞ。
いよいよ4月オープンです! 「原理原則研究会in名古屋(第1期)」 中島孝志の「すべらない講義」を聴いてみませんか?
ところで基本的な話ですが、いま、デフレなの?
総務省がピックアップしたモノのうち価格が下落したのは3割。で、残りは現状維持か上昇してます。落ち込みがとくに激しいのは資源価格とサービス価格、そしてハイテク価格。。。技術進歩と競争激化の結果、下落したのであってデフレではありません。
原発停止で原油と天然ガスを大量購入しましたから貿易赤字は当然です。しかし円高分だけ安く買えました。
いまにデフレが懐かしく思えるようになります。
インフレなんかなりっこないのに、2%のインフレターゲット。できるわけがないから、白川さんは任期前に辞めちゃいます。で、あとは「量的緩和」と「インフレ」が大好きな学者さんが総裁になるんでしょう。
量的緩和とインフレ。これ、別物です。
まずは物価を上げる。給料が頭打ちなのに物価だけが上がれば使えるお金は目減りします。何かを買えば、その分、何かが売れなくなります。売れなくなったモノを売ったり、つくってる企業や人は儲かりません。マーケットから追い出されます。
あのマクドナルドが減収減益です。この1〜2年、100円コーヒーや100円マックしか注文しない人が増えたのでしょう。客単価が落ちたのです。高いハンバーガーやセットメニューはやめとこう、節約しようよ、となりました。
「これからは物価を上げるから、それぞれ150円コーヒーと150円バーガーにできますよ」と言われても、そんなことはしないでしょう。なぜなら、コンビニのおにぎりにお客さんをとられてしまうからです。
はたしてマクドナルドは値上げするんでしょうか。。。
購買力平価で考えても、世界中で日本のマクドナルドがいちばんお買い得です。つまりデフレ対応の価格なんです。それを無理矢理インフレ価格にするのがアベノミクスです。
これから、円安になり、材料や資源、電力などのコストが高くなる分、価格に転嫁できるのでしょうか。よりいっそうの経営努力でカバーするつもりでしょうか。やっぱり売上を増やして利益を出して、賃金をアップさせたいでしょうが、かなりきついと思います。
円安トリックで赤字が黒字に転換した輸出中心の企業ならベアも可能でしょうが、はたして、ベアを断行できるでしょうか。せいぜいボーナスなどの一時金でしょう。なぜなら、ベアは退職金や社会保険などに連動するからです。ベアで所得税と住民税をたくさんとりたいでしょうが、賃金をどうするかは、経営者が決めます。首相の出る幕ではありません。
だから安倍首相は「賃金を上げて欲しい」と財界に懇願したのです。
しかし不思議ですね。賃金を上げろという一方で、2%のインフレにしろ、というのですから。インフレとは実質的な賃金下げでしょ。
ここ数年、企業の剰余金(=内部留保)は貯まる一方なのに従業員の給料とか賃金は頭打ちでした。リストラ旋風ですから実質的にはダウンしてきました。円高とデフレのおかげで生活できたようなものです。上場企業の役員報酬だけが右肩上がりで増え続けています。
財界のお偉いさんは増税も関係なし。インフレも関係なし。円安ウェルカムでしょう。ま、財界を敵に回すようなことを政府が言うわけがありません。
「賃金は上げましょう。けど、それは成果を上げた人にです。そうだ、成果主義をまたやりましょう。年俸制にしましょう」という論理のすり替えが行われるかもしれません。
けど、経営者たちは知っています。成果主義などなんの役にも立たないことを。
根本的な疑問ですが、「物価を上げろ、それに比例して賃金も上げろ」と言いますが、いったいどんな理由をつけて、企業は製品やサービスの価格を上げるのでしょうか。社会主義国じゃあるまいし、家電メーカーですら10社以上もある日本で。。。談合せよ、というのでしょうか。
安くても売れない。高くても売れる。
問題は高くても売れる商品とかサービスが少ないことでしょう。可処分所得が少なくなると、いちばんいい商品とかサービスだけが売れます。2位はなんとかしがみつき、3位以下はマーケットから消えます。
だから価格を安くして踏ん張るわけです。2位にシェアを奪われたくないから業界トップだって価格を上げたくはありません。結果、シェア1位のガリバー企業だけが価格を上げられるわけです。
しかし、そんな企業はとっくに上げています。
価格を上げ、賃金を上げ、円安にして。。。インフレになったところで、通貨高となった外国企業にとって、いまほど日本企業の買収がしやすいタイミングはありません。
「株高にして時価総額を上げてるから大丈夫だよ」
本当でしょうか。株高より為替のほうがはるかにスピードか早くインパクトが強いと思います。強制インフレの結果、ハゲタカは日本企業買収のチャンス到来。日本の不動産買い占めのチャンスです。
円安・インフレにすることが自己目的化されているようですが、大切なことは企業体質の強靱化です。ゼネコンが喜ぶ国土強靱化=公共事業よりも、強靱化すべきなのはこっちのほうです。
さて、通貨が減価すれば輸出競争力が高まります。だから貿易収支は赤字が黒字転換したり、大幅黒字になったりします。
けど1973年のイギリスはポンド下落にもかかわらず貿易赤字は拡大しました。おかげでデフォルト寸前になって、IMFの緊急融資を受けました。
ポンドが安くなってもそんなに急に輸出や輸入が増えたり減ったりはしません。ふつうは通貨が安くなれば輸出競争力がつきます。相手国のの通貨建て輸出額は同じでもポンド建て輸出額は増えるはずです。ところがそうはならなかった。貿易赤字が増えてしまった。早い話が、通貨安は輸出になんの貢献もせず、国内物価だけを押し上げて高インフレを叶えた、ということです。
いま、円安で株高となり、大喜びの輸出企業経営者と投資家ですが、3月決算に愕然とするはずです。つまり輸出の激減です。
インフレには振れるでしょうが、それが景気回復につながるとは限りません。かつてのイギリスを見れば、インフレ+スタグネーション=スタグフレーションとやらになってしまうかもしれません。
さて、インフレには賃上げだけでなく、金利上げも付きものです。
もし超低金利が3%にでもなれば、個人金融資産1500兆円の利息は45兆円になります。国家税収より多くなります。年10兆円の消費税収(5%)なら4年半分です。消費税を22.5.%にしてもへっちゃらです。
もち、すべてが消費に回るわけではありません。お金持ちは元金を減らすのは嫌でしょうが、利息のような「あぶく銭」ならいくらでも使うでしょう。毎年入ってくるからです。
でも残念なことに、どんなにインフレになろうと政府は金利を上げませんよ。1%の上昇で大手金融機関3.5兆円、地方銀行2.8兆円の損失だからです。生保は15兆円ものロスで破綻しかねません。だからインフレなのにゼロ金利はまだまだ続きます。
50年代、アメリカでは預金金利に上限が貴蹴られ(レギュレーションQ)がありましたけど、あのときも資金はより高い金利を求めてヨーロッパに移りました。今回も、外国人は日本国債からほかの金融商品にシフトするでしょうし、金利を政策的に上げなくても、長期金利は市場の論理で動きますから、国債の利率は暴騰し、国債の価格は暴落することになるかもしれません。
こうなったら日本経済は火だるまです。
さて「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は『日本人はなぜ貧乏になったか?』(村上尚己著・中経出版)です。詳細はこちらからどうぞ。
いよいよ4月オープンです! 「原理原則研究会in名古屋(第1期)」 中島孝志の「すべらない講義」を聴いてみませんか?