2006年11月06日「月下の恋人」 浅田次郎著 光文社 1575円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 先週1日の講演会、シンポジウムは惨憺たる結果でしたねぇ。ホント、来場者には申し訳ございませんでした。
 理由? 咳が止まんなかったのよ。
 10月の半ばから風邪ひいちゃってさ。医者からもらった強烈な咳止め飲んだんだけど、それが開始30分前でさ、効いてきたのは終わってからなのね。トホホ。
 咳おさえるのに必死でいったい何を話したんだか・・・シンポジウムのほうはコーディネーターだからあまり話をしないで済んだけど・・・もう大変。

 実は、こういうことって10年前にも1回あったんだよね。
 富士通の社内向け講演会でね、この時はもっと大変でした。 ひと言話すと、その3倍くらい咳き込んじゃうの。話す方も苦しいけど、聞いてる方はもっと苦しいという講演会。
 断ればいい? たしかにそうなんだけど、「そこをなんとか」とか言われちゃうとさ、「まっやってみようか」なんてさ。で、とっちらかっちゃうわけね。
 今週も銀行で講演会があんだよね。咳止めきちんと飲んでがんばろうっと(喉をアルコール消毒すれば効くかな? 芋焼酎とか効きそうだけど?)。

「地下鉄に乗って」が上映中ですね。私、5回観ました。もうそろそろ封切り(表現が古いね、どうも)も終わるんじゃないかな。で、次は「椿山課長の七日間」か(11/18ロードショー)。
 これ、以前、原作をこの欄でご紹介しましたよね。好きなんですよ。主役が西田敏行さん。で、彼が七日間だけ入れ替わって現世にやってくるのは伊東美咲さん。
 お願いだから、下手な演技しないでね、といまから戦々恐々としてるんです。

 この「月下の恋人」は「小説宝石」に連載された短編をまとめたものです。
 表題ほか、10品が収められてます。「地下鉄に乗って」の一こまになりそうな作品もあったりして。浅田さんは短編も抜群にいいね。

 とくに好きなのは「告白」。「適当なアルバイト」と「風蕭蕭」。後者の2つだけが連続話なのよ。

 「告白」は女子高生のお話。両親は離婚。だけど、父親は離婚後も毎月、この娘名義できちんと預金してくれてんの。母親には内緒にしてんだけとね。で、新しい父親(ペンキ屋)のことは「あいつ」呼ばわり。
「そんな言い方やめなよ」と窘めるのは茶髪どころかブロンドに染めたお友達。この子、頭もいいし人の心を読む鋭い娘なんだな。
「捨てた男をお父さんといって、いま世話してくれてる男をあいつ呼ばわりすんのっておかしいんじゃない?」
「・・・」
 わかってるの、ホントはね。だけど、あいつ呼ばわりしなくちゃいけないの。その言い方で自分を支えてきたのよ。
 なぜ? 理由は読めばわかります。
 
 「適当なアルバイト」では、貧乏学生2人がお化け屋敷でバイトすんだよ。とくれば、浅田ワールドの得意技のオンパレードになるわなぁ。
 「風蕭蕭」とは、ちんけなチンピラの物語。これ、「極道金ぴか作家」としてデビューしただけある佳品になってます。どこか健さんの「唐獅子牡丹」を彷彿とされるね。これ、司馬遷の「史記・列伝」のばくりだよね。お話の中でそれとなく触れてますよ。
 250円高。